いつか王子様が 〜白雪 真帆〜

 

 

 

 

占いなんて、信じない。

信じてても、一つもいいことなんてない。

運命なんて、信じない。

私の道は、自分で決めるから。

 

「真帆ちゃ〜ん、聞いて聞いて!」

・・・またか。

双子の姉である美帆が、そう言って部屋に入ってきた時、こっそり私はため

息をついた。

高校に入学してからというものの、姉さんは私にその日一日あったことを報

告するのが、日課になっていた。

中学までは同じ学校に通っていたものの、何せ私たちは瓜二つのなのだから

先生や友達から間違われてばかり。それに嫌気のさした私は、一緒にひびき

の高校に行こうと言う姉さんの誘いを断り、わざわざ隣の市にあるきらめき

高校に入学した。

本当は、ブレザーが着たかったのだけれど、ここのセーラー服も結構気に入

っている。

それはともかく・・・。

「なあに、姉さん。今日は、小人さんにでも出会った?それとも・・・」

「王子様に出会ったの!」

「・・・はぁ?」

われながら間抜けな返事だと思ったけれども、正直な私の反応。

姉さんは、もじもじと髪の毛をいじりながら言う。

「今日ね・・・学校でぶつかった人がいたの。・・・その瞬間、わかったの。この

人が、私の王子様だって・・・」

「ふうん・・・ようするに、一目惚れな訳ね」

「え、やだあ〜真帆ちゃんたら・・・」

きわめて的確なつっこみを入れると、姉さんはとたんに真っ赤になる。

そして、ポツリとつぶやく。

「今朝の占いにでていたもの・・・運命の人との出会いがあるって」

入学早々、好きな人が出来た姉さんが、ちょっぴりうらやましかった。

 

一枚、また一枚とタロットカードがめくられる。そのたびに、表情を変える

姉さん。

彼女の手元をなんとなく眺めている、暇な私。

「ねえ、姉さん。そんなにゆっくり占いなんかしてたら、『王子様』との待

ち合わせに、遅刻しちゃうよ?」

「だって真帆ちゃん、この最後の一枚が大事なのよ・・・」

と言いながら、姉さんが最後の一枚をめくろうとしたその時、不意に下から

母さんの呼び声が聞こえた。

「美帆ちゃん、ちょっと来てくれる?」

「はあ〜い」

美帆はカードを置き、パタパタと部屋を出て行った。一人残された私は、な

んとなくカードをめくって見る。

ラヴァーズの正位置、か・・・。

門前の小僧なんとやら、でこれが恋愛の成就を示すカードだって事は私も知

っている。

姉さんが占っていたのは、今日のデートの行方なのだから、さしずめ甘い時

間が過ごせるってことか・・・。

・・・・・・。

・・・後から考えると、このときの私はちょっと変だったのかもしれない。

なぜなら、カードを戻しかけて・・・逆位置になるように、ひっくり返してか

ら置いたから。

その結果、姉さんは今日のデートを嫌がり・・・私が代わりに行くこととなっ

た。

・・・内心、それを望んでいたのかもしれない。

 

デートの代役は、いたって順調だった。『王子様』は、何もお気づきになら

ないご様子。

両親ですら、見間違う私たちを見分けるなんて、できっこない。それを利用

して、お互い色々と入れ替わってきたのだから。

「今日は、本当に楽しかったです。また、誘ってくださいね」

帰りぎわ、姉さんになりきってそう言うと、彼はニコッと笑って「もちろん」

と返してきた。

・・・優しい笑い方。

姉さんが好きになったのも、少し・・・ほんの少しだけど、わかるような気が

する。

と、彼が少し首をかしげた。

「あの・・・白雪さん、だよね?」

「え!?」

「あ、ゴメンゴメン。なんか、今日の白雪さん、いつもと違うような気がし

て・・・。別人なわけ、ないのにな」

・・・・・・!

慌てて言い訳する彼の言葉に、息が止まりそうになる。

どうして、初対面のこの人が・・・?

・・・その後、何を話してどうやって帰ってきたのか、よく覚えていない。気

が付くと、自分の部屋でベットに腰掛けていた。

どうだった、と聞く姉さんに今日一日のことを報告しながら、私は動揺する

心を静めようと必死だった。

それからも、時々デートの身代わりになった。

占いの結果が悪かったり、姉さんの気に入らない場所でのデートだったりす

ると、私が出て行くこととなる。

その他にもたまたま、彼からの電話を受けたときは、こっそり行ったりもし

た。

そうそう、いつだったっけ・・・室内プールでデートしている2人にばったり

会ったときは、一瞬ひやっとしたこともあった。でも、結局ばれなかった。

そして、高校生活は早くも終わりに近づきつつあった。

 

デートの約束をしておきながら、風邪をひいてしまった姉さんの代わりに

今日も私は身代わりになっていた。

中央公園の並木道を、2人で歩く。どこまでも続くまっすぐなこの道が、私

はとても好きだった。

「この道の先には、何があるんだろう?」

まるで、独り言のように言った彼の問いに、私はぼんやりと答えた。

「未来・・・かしら」

あっ・・・!

言ってしまってから、気づいた。私は今『白雪美帆』なのだ。

姉さんなら、さしずめ『妖精さんの国』とでも答えたことだろう。

案の定、彼はじっとこちらを見つめている。

や、やばいかも・・・。

「白雪さんて・・・」

まずい。

「本当に、不思議な人だなあ」

・・・・・・・・・え?

「いつも、ホンワカとしておっとりしているのに、時々別人みたいにはっき

りと『自分』を出すんだよなあ」

・・・だって、別人だもの。

言えない言葉を、飲み込む。

「そ、そう?・・・ですか?」

「うん。・・・でも俺は、そういうはっきりした白雪さん、好きだけど」

えっ・・・ええ?!す・・・好き?好きって、その・・・。

完全にパニックになってしまっている私を、彼はいつものように優しい目で

見ていた。

 

今なら。今なら、姉さんが彼を好きになった理由がわかる。

私たちは、ずっと探してきたのだ。

2人のうち、どちらかではなく『私』を探し出してくれる『王子様』を・・・。

そして、運命のあの日。

「なんとなく、そんな気はしていたけど・・・でも、驚いたな」

それが、私たちが双子であることを知った、彼の感想だった。

 

卒業式前夜。

窓から入る月の光の下、私は机に向かって手紙を書いていた。・・・決して、

読まれることのない手紙を。

『伝説の木の下で待っています』

もしも、同じ高校だったなら。もしも、彼がきらめき高校の生徒だったら。

だけど、だけど彼は、姉さんの・・・。

机の上には、赤いリボンのかかった箱。月明かりに淡く光る、銀のブレスレ

ット。

それは、誕生日の翌日、彼が私のために再度持って来てくれたプレゼントだ

った。

ゴメン、姉さん・・・私・・・彼の事・・・。

コン、コン。控えめなノックの音がして、私は慌てて手紙を隠した。

「真帆ちゃん、今、ちょっといい・・・?」

「・・・どうしたの?」

姉さんは、細く開けたドアからするっと部屋の中に入ってきた。そのまま

その場でちょっと立ち止まってから、意を決したかのようにこちらに近づい

てくる。

「ねえ、真帆ちゃん。・・・手紙、書いた?」

「え?!」

私は、驚きのあまりポカンと姉さんを見つめ返してしまう。

姉さんは、ちょっと寂しそうに笑った。

「真帆ちゃん、いつかきらめき高校の伝説の話、教えてくれたでしょう?私

も、書いたの。『伝説の鐘の下で待っています』って」

そう言って、手にした封筒を見せてくれる。・・・彼の、名前。

「姉さん、私・・・」

「うん・・・分かるの。だって、私と真帆ちゃんは、もともと一つの存在だっ

たんだよ・・・」

・・・何も答えられない。

黙ってうつむいている私に、姉さんはしゃがみこんで目線を合わせてきた。

「真帆ちゃん。真帆ちゃんも、王子様・・・見つけちゃったんだよね?」

姉さん・・・。

「ゴメン・・・ゴメンなさい、姉さん。私、彼が・・・」

「いいの、真帆ちゃん」

不意に、姉さんは私のことをぎゅっと抱きしめた。

「ちゃんと、占いに出てたの。真帆ちゃんも、運命の人に出会うって・・・」

「姉さん!」

私は、姉さんを抱きしめ返す。

もう1人の私・・・大事な姉さん。

「ありがと・・・姉さん」

身体を離すと、私は引き出しの中から手紙を取り出した。

手を差し出す姉さんの前で、その手紙をゆっくりと破いていく。

「真帆ちゃん?!」

びっくりしている姉さんに、私はにっこりと笑いかけた。

「いいんだ、これで。だって、彼はきっと姉さんのこと好きだよ?邪魔する

なんて野暮なこと、私に似合うわけないじゃん♪」

「だって真帆ちゃん、それ・・・」

私は、ガラッと思いっきり窓を開ける。大きな満月。

手の中の細かい紙切れは、見る見るうちに夜風へと溶けて飛んでいった。

・・・残ったのは、かすかな胸の痛みだけ。

「さ、姉さん。早く寝て、明日に備えなきゃ、ね!」

「・・・ありがとう、真帆ちゃん・・・!」

背中にしがみついてくる、姉さんの暖かい体温を感じながら、少し上を向く。

・・・涙が、こぼれないように。

 

占いなんて信じない。

運命なんて信じない。

だけど、一つだけ信じている。

So  that  a  prince  may  come  someday.

 

END


 

著名人さん・・・というか、彼女はひび高生じゃないものねえ?(笑)

とはいえ、美帆ちゃんと入れ替わって登校していた日もあったに違いない!

なんて、断言してみたり(笑)

とにかく、彼女の性格も良く知らない&きらめき高生であることも知らない

頃に書いた作品。

なのに、なぜ彼女がきらめき高生なのかって?そりゃあ、そうだったら面白

いだろうな〜って思ったからなんですが・・・当たりましたな(笑)

 

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