お兄様とえ〜みちゃんv

 

 

「こんにちは〜♪」

「あ、あおいちゃんなの〜!いらっしゃ〜いv」

喫茶のドアを開けると、可愛らしい声が飛んできた。

私も背が低い方だけど、それでもまだ見下ろしてしまう位置にある顔。

にこにこ笑っている、ここの看板ウェイトレス・麗ちゃん。

表のドアに、可愛い看板が掛けてあったのは彼女の趣味の様子。

「いらっしゃいませ、葵さん」

カウンターの向こうからは、いつもの落ち着いた笑顔。

私もニッコリ笑ってみせ、カウンターの真ん中あたりへと腰掛けた。

「こんにちは、マスター。アイスティーをお願いしますね」

「はいはい。アールグレイだね」

この喫茶のマスター・daiさん。みんな、マスターって呼んでいる。

いつも落ち着いていて、物静かな人。

「ますた〜、私がもってくよお〜」

「いいからウェイは、掃除の続きをしなさい」

苦笑して、アイスティーを準備するマスター。

麗ちゃんは彼が大好きみたいで、いつも子猫のようにまとわりついている。

その様子は、可愛らしいのなんのって・・・。

マスターもまんざらじゃなさそうだけど、何処かそっけない態度。

だけど、本当はとても麗ちゃんのことを大事にしている。

いつか、言ってたっけ。

『・・・素直になれなくて、苦労をかけてるけどね』って。

あれは、絶対麗ちゃんのことだと思うな。

「はい、お待たせ。そういえば、今日は元さんは?」

「来てませんか?じゃあ、もうすぐ来るんとちゃうかな・・・」

「そっか。今日は、久しぶりに詠美さんも来るしね」

・・・詠美さん。その名前に、私はピクッと反応した。

お兄様の彼女として、お兄様自身からも周りの人からも噂は聞いている。

だけど、私はまだ会ったことがない。

この喫茶には彼女の絵が飾ってある。マスターや、カインさんなどの常連

の方々が描いているらしい。麗ちゃんや、優希ちゃんの絵も。

絵で見ると、綺麗な長い黒髪をもった、とても美人な人。

人気者らしく、すぐに誰かの会話に出てくる。みんな、彼女が好きみたい。

そんな人を彼女にするなんて・・・お兄様ってば、やるなあ。

もちろん私の大好きなお兄様だから、そんじょそこらの女の人じゃあ私は

認めてあげないけどね。

 



カランカラ〜ン♪

「ごめ〜ん、マスター!遅れちゃった〜!」

麗ちゃんやマスターが答える前に。私は入ってきたその人が、詠美さんで

あることにすぐに気づいた。

絵と同じ、長い黒髪。端正な容姿に、均整のとれたプロポーション。

それになにより、体中から溢れるような華やかさ。

まるでそこだけスポットライトが当たったかのような、輝きの持ち主。

思わず立ち上がってしまった私に、彼女はニッコリと笑いかけてきた。

「あら?お初な方ね♪」

「は、はい」

「ここのウェイトレスで、加藤詠美よん♪よろしくね☆」

私は、息を吸い込む。ドキドキする、鼓動を静める。

「風峰葵といいます。・・・いつも、元お兄様がお世話になっています」

詠美さんは、目をぱちくりさせる。

ちょっと考えるように小首を傾げて。そんな仕草が、可愛らしい。

「・・・お兄様、なの?」

「はい。私は妹なんです。お噂は、かねがね・・・お会いできて、光栄です」

言おうと思っていたことを、一気に言う。

そしてそのまま反応をうかがっていると、詠美さんは華やかに笑った。

「あら。そうなんだ〜。こちらこそ、光栄よん♪」

ちょっと待ってね、と言い残して詠美さんは着替えに行った。

「・・・詠美さんは、知らなかったみたいだね。葵さんのこと」

マスターが、コップを拭きながら言う。いつもの、静かな笑みをたたえて。

「みたいですね・・・」

「まあ、私達も知らなかったけどね。元さんは、そういうこと意外に話を

しないから」

「・・・そうですね」

お兄様が話をしないのは、無理もない。私達の関係を上手く説明しろという

方が難しいだろうから。

簡単に言えば、兄と妹。それ以外の、何者でもないのだけれど。

片親だけ同じとか・・・まあ、色々と複雑だったりするから。

「こんにちわ〜♪」

ベルの音とともに、飛んできた声。

「・・・噂をすれば、だね・・・」

マスターが、苦笑する。

「げんちゃん、いらっしゃいなの〜」

「おう、ウェイさん!」

お兄様は軽く片手を挙げ、テーブルを拭いている麗ちゃんに声をかける。

「今日も可愛いな、アハハ!」

「・・・ふにゅ〜げんちゃん、ちょっとおかしいの・・・」

怪しげな目で見られてるやん、お兄様ったら・・・何をそんなに、うれしげ

なんだか。・・・まあ、理由はわかってるけど。

「いらっしゃいませ、元さん」

「こんちは!マスター。おっ、葵も来てたのか〜」

お兄様はニコニコしながら近寄ってくると、私の隣りに腰掛けてあたりを

きょろきょろと見回す。

「・・・詠美さんなら、もうすぐ出て来ますよ」

マスターがそう言った時。ちょうど、カウンターの裏から詠美さんが現わ

れた。

「え〜み〜!!」

「あら、だ〜りん♪来てたのねvv」

「会いたかったよ〜!え〜み〜!!」

2人の間には、ハートが飛び交う。・・・こんなにまでとは、思わなかった。

ほんまに、ラブラブなんや・・・なんか、ちょっとじぇらし〜かも。

・・・とりあえず立ち上がって、カウンターの端へと避難。

密度の濃い空気に、なんだかあてられそうになったから。

「このラブラブモノメガ・・・」

「うわあっ!・・・あ、カインさん。来てたんですか」

カウンターの端には、カインさんが座っていた。本当に、神出鬼没な人だ

なあ。

「あれは本当に、参りますね・・・」

「ふみい〜げんちゃんと、えいみちゃんらぶらぶなの〜」

いつの間にか、マスターと麗ちゃんもやって来ていて、遠巻きに2人の姿

を見つめる。どうやら完全に2人の世界を作っているらしいお兄様たち。

「だって、私だ〜りんに会えなくて・・・泣きそうだったのよ?」

「俺なんか、ずっと泣いていたよ?え〜み・・・」

「はにゃ〜うれしい、だ〜りん!」

「え〜み〜!!」



「・・・誰かどうにかしろって感じですね」

「あれが兄かと思うと、ちょっと嫌なんですけど」

「まあ、あの光景はここの名物になりつつありますし・・・」

「めいぶつさんなのなの〜」

そして、4人でため息。



やがてどうにか落ち着いたのか、お兄様はカインさんと話し始めた。

マスターと麗ちゃんも仕事に戻り、私はぼんやりと紅茶を楽しむ。

「よいしょっと♪隣り、いい?」

「あ、詠美さん・・・」

私の横で詠美さんは、ニッコリ笑ってみせる。

「マスター!アイスコーヒーね?」

「・・・自分でいれなさい、自分で」

マスターは苦笑しつつも、詠美さんのためにアイスコーヒーをいれている。

彼の、こういう優しい所が喫茶に人が集まる所以なんだろう。

「ほら、ウェイも。カフェオレにしたから」

「ふみぃ〜ますたー、ありがとうなの〜」

嬉しそうな、麗ちゃん。いいなあ、優しい人がいつもそばにいて。

まあでも、それを言うなら・・・

「ん?なあに、葵ちゃん」

「いえ・・・あの、詠美さん?ちょっと、聞いていいですか?」

「いいわよん♪」

詠美さんは、軽い口調とはうらはらに、あでやかに微笑んでみせる。

・・・本当に、綺麗な人。

「あの、お兄様の一体どこがよかったんですか?」

「全部♪」

・・・即答ですかい・・・。

まあ、なんとなく予想していた答えに、私は苦笑してしまう。

「私がね、先にだ〜りんを好きになったのよ♪だってだ〜りんってば、

素敵なんだもの〜♪」

「はあ・・・」

お兄様が素敵な人だということは否定しないが、ここまでハッキリと

言われると、身内のことだけになんだか面映いものを感じる。

私が微妙な表情をしていると、詠美さんはクスクスと笑い出した。

「だ〜りんてばね・・・うふふ・・・」

言いかけて、途中で止める。そして、幸せそうなクスクス笑いをする。

・・・思い出し笑いなのかな?

彼女の笑顔を見ていると、こっちまで幸せな気分になってくる。

「私、だ〜りんのこと、大好きなのv」

・・・ああ、そうか。

少し照れながら、でもはっきりと言い切る詠美さんを見ているうちに、

気づいた。

そう、きっとこの人でなくてはいけなかったのだ・・・お兄様にとっては。

お兄様は、一見何も考えてなさそうだけど、実はとても繊細な人。

みんなの中の自分の位置をいつも測っていて、上手く馴染んでいる。

時々普段の温和さとは裏腹に、攻撃的になるときもあるのだけれど。

だけどそれは、お兄様にとっては身を守るすべなのだ。

私に対しては、身内ということもあって、ある程度は気を許してくれて

いるのだと思う。だけど、心の奥は決して見せてくれない。

だけど、詠美さんは。

この人と居ると、否応なく明るい気分にさせられる。

私がお兄様の気持ちを引き立てようと考えて考えてすることより、詠美

さんの「だ〜りんv」という明るい声が何倍も効果的だ。

きっとお兄様はとてつもなく詠美さんに、憧れていて。

彼女の強い存在感に、ものすごく惹かれていて。

そして詠美さんは、その輝かしいまでのオーラでお兄様を包むのだ。

ただ一心に、お兄様だけを好きでいる。そのパワーがまた、お兄様を

より魅力的にさせているに違いない。

2人の、お互いに対する相乗効果は、きっと限りない。

・・・ああ、大丈夫だ。この人なら、お兄様を幸せにしてくれる。

「詠美さん・・・お兄様を、よろしくお願いしますね」

彼女は少し驚いた顔をして・・・そして、いつもの彼女らしい微笑で答えた。

「ええ、もちろん」

 

END

 


 

有名なとこではとても有名な、カップルの話。

最近、ラブラブパワーが落ちてきていますが・・・この頃の無敵状態が懐かしい

です(笑)

ひび高って、おおっぴらにラブラブしているカップルがあちこちにいるのが、魅力。

そう思うのって、私だけですかねえ?

違うカップルの話も、また書きたいな〜と思う今日この頃。

次の、ターゲットは君たちだ(謎)

 

 

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